古事記・中巻
応神天皇の皇位継承者
第15代・応神天皇には、オオヤマモリ、オオサザキ(第16代・仁徳天皇)、ウジノワキイラツコという御子がいました。
応神天皇は、溺愛していたウジノワキイラツコに後を継がせたいと思っていました。
そこで応神天皇は、オオヤマモリとオオサザキを呼び、「お前たち、子供は愛おしいか?」と尋ねました。
二人とも肯定したので、天皇は次に「年長と年少ではどちらがより愛おしいか?」と尋ねました。
「年長です」とオオヤマモリが答えると天皇が不機嫌になったので、空気を読んだオオサザキは「年少の子はまだ未熟なので大変心配で愛おしいものです」と答えました。
これを聞いた天皇は、ウジノワキイラツコを皇太子に、オオサザキを皇太子の補佐に、オオヤマモリには山や海の政治を任せました。
名前 | |
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1 | 男性 大山守命(おおやまもりのみこと) |
2 | 男性 大雀命(おおさざきのみこと) |
3 | 男性 宇遅能和紀郎子(うじのわきいらつこ) |
オオヤマモリの謀反
応神天皇が亡くなり、オオサザキはウジノワキイラツコに皇位を譲りました。しかし、兄のオオヤマモリは納得せず、ウジノワキイラツコから皇位を奪おうと軍勢を整えました。
オオサザキからこの知らせを受けたウジノワキイラツコは、自分の替え玉を作って仮小屋の中に置くと、自分は船頭になりすまし、川で待ち構えていました。
そこへ、草むらに兵を隠し、服の下に鎧を着けたオオヤマモリが1人でやってきて、船に乗り込みました。
船を漕いでちょうど川の中ほどに進んだ時、ウジノワキイラツコは船を揺らし、オオヤマモリを川に落としました。
今度はそこへウジノワキイラツコの軍勢が現れて弓矢を向けたので、オオヤマモリは岸に近寄れず、そのまま流され、溺死してしまいました。
引き上げられた亡骸は、大和国と山代国の境にある那良山(奈良山)に葬られました。
仁徳天皇の即位
オオヤマモリが亡くなり、ウジノワキイラツコが即位するはずだったのですが、彼はオオサザキにその地位を譲ろうとしました。
しかし、天皇に即位するのはウジノワキイラツコと考えていたオオサザキとの間で皇位の譲り合いが始まりました。
そうこうしているうちにウジノワキイラツコが若くして死んでしまい、最終的にオオサザキ(第16代・仁徳天皇)が即位しました。